低分解能ロータリーエンコーダを用いた場合の, モータ回転角度推定と補間
ACサーボモータなどで電動機の回転子角度を検出したいとき, 最近のモータであれば高分解能ロータリエンコーダが接続されているため, 困らないだろうと思う。
しかし, 古い電動機を使用するとロータリエンコーダが極端に低分解能であったり, そもそもロータリエンコーダがついてなくて磁極位置検知用のホールセンサが3つだけついてるということもある。
このような場合, 最大トルク制御を目的にしてベクトル制御をするにしても, 回転子角度の検出分解能が低すぎて高効率駆動が見込めない。(実際には, 多少検出角度の分解能が低くてもベクトル制御はできはする)
そこで, 現在所有している同期電動機(IPMSM)をプラントとし, 3相ホールセンサのみで実用に堪える回転子角度の検出制御を考える。
画像出典: SPMモータ(ブラシレスDCモータ) - haratkhr技報
所有しているモータは4極のIPMSMで, ホールセンサが 60度 ごとに配置されている。
ホールセンサはラッチタイプのもので. 回転子磁極によりハイかローが出力される。
A B Cのホールセンサの状態により, 4極モータの場合は 30度 間隔で回転角度が把握できる。
30 度間隔ということは, 1回転あたり 12 回しか角度が取得できない。
ここでは簡単のために半回転で角度が 0~2π [rad] であるとし, それ以上は値はループすることとして, 一回転 6回 ということで話を進める。
つまり分解能は 60度 (1.08 [rad]) であり, お世辞にも高いとは言えない。
今回は, テスト条件としてモータ回転子は 0[s] から角加速を開始し, 3 [s] のタイミングで負荷が接続され回転数が急峻に低下する上図のようなモデルをMATLAB Simulink上に用意した。
実際にはこののこぎり山が2回で回転子が1回転するが, 先述したとおりのこぎり山1回で回転子が一回転することとする。
図を見ると, ベクトル制御のプロであればまともな制御は厳しいということが何となくわかると思う。(現象としては, d q軸電流にのこぎり波状のリップルが重畳する)
このようなモータをちゃんと制御するため, 角度検出を滑らかにするアルゴリズムの考案を急いだ。
理想的には, 上図点線のような角度が検出される。
理想的な角度(点線)と低分解能センサから得られる角度(実線)の差異を補完する制御系が必要となる。
低スペックなMCUを使用することを想定するため, 複雑なアルゴリズムを用いず補間を行う必要がある。
いろいろ考えたところ, 簡易なアルゴリズムで補間が実現できた。
ホールセンサからの角度情報が変更される度にMCUでは割込みが走るようにし, ある時刻 t でかかった割込みからタイマをカウントアップ開始し, 次の割込みでカウンタ値の読み取りとリセットを行い 角度が 1回 切り替わる時間 Δt を計測する。
Δt の逆数をとることで回転子の回転速度モデルと等価になる。
この回転速度を比例定数としてセンサ値に1次時間関数 もしくは 2次時間関数を加算する。
つまり, 回転速度モデルを 1/Δt とすると, センサ値のステップ状の関数に割込み毎にセンサ値を初期値として初期化し, それ以降は か を加算する。
このような単純なオブザーバを用いて補間を試みた。
このようにして予測補間を行った波形は下図 赤線 のようになる。
t = 0 ~ 0.5 [s] の期間では, センサの値は不変であるためどちらに回転するのかわからず, 予測は行えていない。しかし, 一度 60度 が検出されるとそれ以降は補間がかかり, ほぼ理想的な回転角度 (点線) に一致していることがわかる。
外乱により速度が急峻に低下した 3 [s] のタイミングでも予測に大したズレは無く, 補間できていることがうかがえる。
理想角度とセンサ角度, 補間角度の差から誤差をプロットしたものが下図である。
黒線はオブザーバなしの, センサ値と理想値の誤差である。
常に ±1 [rad] ほどののこぎり波が重畳していることがわかる。
この状態でベクトル制御を行うと, モロに dq軸電流にこれが乗ってしまう。
赤線はオブザーバにより補間した値と理想値の誤差である。
0~0.5 [s] の期間では補間が行われず黒線と一致しているが, 一度角度が検出されるとそれ以降の誤差は黒線より小さくなっていることがわかる。
回転が安定した状態で, 誤差が大きいところでもオブザーバ無しの場合にくらべておよそ 1/10 の誤差に留められている。
3 [s] の外乱のタイミングでもそれほど推定がずれておらず, すぐに理想値付近に復帰している。
全体のブロックダイアグラムは下図。
すみません, 見やすいように整形するのはめんどくさくてやってません。<(_ _)>
つい昨日 MATLAB ライセンスを購入しました。
学校の MATLAB とバージョン違いでちょっと使い心地が違いますね。
しかし, いろいろな部分のバグは取れてる模様。いいですね!
ではでは。
ジャンク 東芝 Portégé Z30-C を復活させる ~ SATA限定機にNVMe SSDを突っ込む
こんにちは。というか, あけましておめでとうございます。
ダラダラと工作&研究をしているうちにいつの間にかまた年が一つ明けてしまいました。最近は時間がとても短く感じます。
私は今年で大学に編入し晴れて大学生となるのですが, それにあたって現在使用してるノートパソコン Lenovo X230 を使い続けられるか不安になってきました。
というのも, ストレージは未だ HDD, RAMも 12GB という中途半端な構成な上, プロセッサも現行CPUから何世代も前の物という状態です。
HDDをSSDに換装すればまだいけるかなとも思ったのですが, そろそろプロセッサの限界が来た感じがしています。
特にそれを感じるのは Xilinx の FPGA統合設計ツールの ISE Design suite を使用している時です。
簡単なVerilogソースの Syntax check に1分近くかかり, 論理合成をしようとすれば 10分もCPU使用率が 100% に張り付きます。まともに作業できたもんではありません。
ソフトウェアの開発でもコンパイル時間は作業効率にモロに効いてきます。
年も越したし, ちょうど良い機会として携帯ノパソの世代交代をしようということになったワケです。
2020年1月5日, 埼玉県八潮市の秋月電子で初売りセールがあったので朝6時から10時半の開店まで待機していました。その時の気温は5℃!!
鼻水が滝のように出てきてつらかった… まぁ, ここらへんの話は別の記事にまとめようと思います。
それで, 八潮初売りセールで満足した後に秋葉原に行き, 某ジャンクPCショップにてよさげなノパソを発見。
私は今までThinkPadを愛用してきたのですが, どうもねらいの第五世代 X1 Carbon などはまだまだ値段が手の届く範囲に落ちていない様子…
Thinkを裏切るのにはかなり葛藤がありましたが, 値段には勝てないということで安かった 東芝 Portégé Z30-C を購入しました。写真は復活後に撮ったものですが。
しかしこれがまた厄介なやつでして, 調べてもあまり情報が出てこない…
一部サイトでは海外向け機だという話も。(にしても, キーに日本語打ってあるしなぁ^^;)
とりあえずショップ内でいろいろ調べて, 抜き取られてる SSD を購入することにしました。
購入したのは WD SN500 NVMe SSD です。500GBで6千円ほど。
事前の調査で M.2 NVMe が対応しているらしいということは把握していたので特に躊躇もなく購入。後でめんどうなことになるとは知らずに…(^_^;;;;)
SSDを装着して電源ON, ちゃんと起動はしました。
とりあえずまずはOSをインストールということで Windows 10 をインストールしようとしたのですが, 問題発生。
デスクトップマシンでSSDの生存は確認。故障ではない。
BIOSからドライブ情報を見ようにも, ドライブ情報の項目はありません。
ハードウェア診断でHDD/SSD診断を走らせようにも診断が起動しない。
う~ん困った! と思い, この機種について再調査。すると嫌な文字列が…
"M.2 SATA type only." "not recognized M.2 NVMe SSD."
ファーーーー
どうすっかなぁ…SSD買っちゃったしなぁ…とか思っててももう遅いのです。わかっています。
しかし, マザーボードに搭載してあるコネクタはキーが1つしかないいわゆるMキーのみのコネクタです。なんでだろう。
同じ疑問を持っている外国人の方をフォームで発見しましたが解決せず。
NVMeを載せようとして詰んでいる人が数名ネット上でも見られました。
うーんどうすっかなぁ…この日は何も進みませんでした。
後日, 友人などにも協力してもらい情報をあつめたりあーだこーだ考えてたりしていると, どうもこれはハードウェア要因よりもソフトウェア要因じゃないかと考え始めました。
一般の考えでは, この機体ではこのSSDは対応していなかった!という結論で完結してしまうところなのでしょうが, エンジニアっぽい考え方をしてみれば, バスが配線されていてCPU内の統合チップセットに正常にアロケートされていれば, SATAでもNVMeでも認識できるはずなのです。
一部のPCではハードウェアロックをBIOSレベルで意図的にかけられていて, 規格が適合していても初期状態のデバイスから変更すると起動すらしなくなる案件を知っています。
しかし, 事前調査で外国人の方がパーツのアップグレードを成功させているところを見るとこのようなロックはかかっていなさそうといえます。
結局, 現状をいろいろ調べ上げてネットでもサーチをかけた結果, 以下のサイトの手順でNVMe SSD を認識させることができました。
この機種に乗っているCPUに統合されたチップセットは, Intel Series 100 というものでして, 現在からすれば少し古いものになります。
このチップセットではストレージのドライブに Intel Rapid Storage Technology というものが使用されています。
簡単に言えばストレージを管理するための技術でして, RAID構成コントローラやPCIeストレージコントローラの役割もになっています。
この機能群が, 機種依存によりデフォルトで検出できず, Windows10 インストーラにドライブとして認識されなかった, ということなのでしょう。
この製品自体, M.2 SATA SSD が標準搭載な上NVMeアップグレードが存在しないようなので, 機能をローレイヤで切ってしまった感じなのでしょうか?
というわけで, IRSTドライバを導入することで無事NVMe SSDが認識されました。
正直SSDの返品できるのかとか, なにに使おうかとか考えてたくらいなので, 解決できてホッとしました。私にとっては6千円は大きな買い物です。
NVMe SSDを装着するのは斜めに配置された SATA ONLY ポートです。
しかしPCIeバスに電気的に接続されていて, 実はSATA ONLY ではないことがわかりましたね。
装着したSSDのベンチも行いました。まぁまぁの速度が出ています。
このSSD自体あまり早いやつではないのですが, 正直ノートならこれくらいで十分です。
PCIe gen 4 なんかのせたら熱でサーマルスロットリングかかりまくること間違いなしですので。
あと, 購入時に 8GB の RAMが載ってましたがちょっと足りない気がしたので, 8GBのRAMを買ってきました。
この機種は SODIMM DDR3 ではありますが, 低電圧動作版の DDR3L-1600 (PC3L-12800) を用意する必要があります。
秋葉原 ark さんにて初売り価格で安く買えました。2千円!!やすい
というわけで, 無事SSD, RAMともに認識いたしました。
この記事もこの機体で書いていますが, X230から移行してもあまり気にならないキーボードでよかったなぁと思っています。
やっぱり NVMe SSD は起動の速さで驚かされますね。
今更ですがスペックを軽く。
CPU : core i5 6300U 2.4GHz (max3GHz)
RAM : DDR3L-1600 16GB
SSD : M.2 NVMe 500GB
ディスプレイ : フルHD
その他 : タッチパネル対応, 指紋センサ搭載, 東芝19V充電アダプタ
タッチパネルなのが結構うれしいです。
基板引くのにもブロック線図書くのにもサイトのスクロールするにも便利です。
価格は 13000円。
個人的にそれなりに軽いしDynabookにしてはヒンジが強そうだし気に入ってます。
では。
ロボット向けBLDCモータドライバの開発
ラジコン用ESCだと急峻な制御も難しいし, かといってメーカ製ドライバはバカ高い…。どうしようかと悩んだ末, 自分で作ることにしました。Makerの本能。
設計思想
とりあえず, 私個人ではロボット向けにそこらへんの安いBLDCをサーボのように使えるようにしたいというニーズがあったため, 次のことを前提にして開発をスタートしました。
・シリアルとアナログ入力で制御できる
・シリアル通信は半二重通信でパワーケーブルともにデイジーチェーン可能である
・速度制御, 角度制御が可能である
・誘起電圧オブザーバによりセンサレス自己位置推定を実現する
・各相電流フィードバックによりトルク制御
・20Aくらいのドローン用BLDCが満足に回せるパワー
・小型
ロボット向けなら60Aもいらんなぁと思いつつ, 汎用性考えるとデカめのモータも回せるようにしたいなぁと葛藤がありました。
しかし, パワーを求めると基板サイズも発熱も大きくなりますし, 今回は欲をいわず20A程度のモータがまわせるレベルの設計にすることとしました。
主回路とゲートドライブ
まず悩むのがスイッチング素子の選定とゲートドライブトポロジーです。
基板自体を小型化したいので, 市販のESCのようにFETクラスタ用の別基板を用意することはしたくなく, 小型SMDパッケージでそれなりに電流を流せるFETを探すのは大変でした。
基板サイズからすると電流を流せるゲートドライバを組む余裕は無いと判断したので, ゲート容量も小さいものを選ぶ必要がありました。
素子は結局 Digikey でいい感じの素子を試験的に購入。良ければ決定という手法を取りました。(コスト考えるのも大変なんですよねぇ~)
ゲートドライブに関してはゲートドライブICや三相プリドライバにコストを割きたくなかったので, 簡単に高速フォトカプラでブートストラップ回路を組む事にしました。
制御まわり
MCU(マイコン)には半二重シリアルをハードサポートする事が求められたのと主回路用にシンメトリPWMの生成が容易であることなどから, STmicro のSTM32F303K8 を採用することにしました。
ファームウェアに関してはPWM用タイマ周りと位置推定アルゴリズム, 電流保護やWDTなどの保護周りを慎重に実装します。
というのも, この手のパワー回路をMCUで動かす回路はちょっとのポカミスで素子を全部焼きますので…。
到着した基板
今回はPCBgogoさんに基板製造を発注しました。
高性能モータ制御プロダクトには, イルカのようになめらかに!という思いを込めて「Dolphin Motor」というシリーズ名をつけることにしました。
基板は2枚面付けとし, 捨て板追加とマウスビット追加を依頼しました。
こうすると手でパキっと割れて楽チンです。
MCUとブートストラップ用フォトカプラ群です。
いいかんじ!!なんかエモい。
現在量産中のセンサレスベクトル制御BLDCドライバ, DMDR-3060です。
— KT electronics(準備) (@kt_electronics) October 19, 2019
半二重シリアル通信により, 1つのコントローラーで複数のドライバを制御できます。
各種制御パラメータはシリアルコマンドにより設定可能です。 pic.twitter.com/3GNBWjanhi
1相の電流フィードバック波形です。
すごいきれいで制御が楽でした。
配線を考えて引くとこうゆうところで得をします。大事。
そのうちプロトコルとかコマンドの一覧をまとめなければ。
販売について
テスラキットと同じくECサイトでの販売を考えてます。
現状量産できそうにないので少量ならDMにて相談にのります。
相談は @kt_electronics まで。
産技祭 2019 おつかれさまでした!
今年も10月26~27日に弊学の文化祭が行われました。ブログでの告知は忘れてしまいましたが^^;
去年と同じくPANGAMEの展示は引き続き行い, 研究室メンバーの卒業研究作品と僕の趣味作品を並べさせていただいた感じでした。
今回も自分のブースの運営で手一杯で他のブースを回る事はできませんでしたが, 来年は遊ぶ側でこれたらなぁと思っています。
そういえば, 高専生生活も今年で最後です。
やはりPANGAMEはお子さんに人気でした。取り合いが起きたりしていてほほえましいです。
にしても, 丸々1年放置していたのに電源投入したら動いたので良かったです。
なにせ600本とかの手配線は雑ですし, 温度変化とかですぐ接触不良や半田クラックを起こしそうな気がしていたので。
これは私の卒研で開発中の2足歩行ロボットの脚です。パーツが届かず動かす事はできませんでしたが注目度は高かったです。(脚がつるされてるのが不気味だからかな^^;)
自作インバータの展示も行いました。
家から0.75kW 誘導モータも持ってきたので大変だった…。
今回は3種類の変調パターンを用意しましたが, やっぱり「ドレミファインバータ」のサウンドが人気でした。
分かる人にはわかるようで, 「あ~これ京急だ~」など言われるとなんか嬉しいですね。
インバータ仲間も寄ってきてくれました。感謝!!
某氏に代理購入を委託していたモータをやっと受け取る事ができました。
知る人ぞ知るデジットマクソンです。
研究室メンバのPAN君が卒研展示していたロボットのサーボモータのギアが逝きました。
展示中からギチギチと嫌な音を響かせていたんですよね^^;
卒研, どうなるのかなぁ…
テスラコイルキットの開発
お久しぶりです, Hkatです。
ブログを5ヶ月くらい放置してしまっていて, まずいなとおもっていたのですが学校の卒業研究の方に追われていまして…。終るきがしねぇ
これといって趣味の工作ができず, ネタも無い状況でしたが, 何もやっていないわけではなかったのでここらで少しまとめておきたいと思います。
テスラコイルキットの開発に着手
単純に言ってしまえばお小遣い稼ぎのつもりでキットを開発することになりましたので, 初めはみんな大好きテスラコイルのキットから。
といいましても, あまり大きなテスラコイルキットはニーズが微妙という事を日本, 海外の界隈から情報を得まして, 小型のテスラコイルキットを作ることにしました。
今回のキットのコンセプトは, 「とにかく単純に・壊れないこと・小型に収める事」です。
小型というのは, 手乗りサイズのSlayer Exciterみたいなスケールのものではなく, 卓上テスラといえる位のサイズで, 基板サイズは100*100mm以内を目指しました。
こだわりでIGBTフルブリッジ, かつ自励&他励の選択可能にしたかったので, それなりに安全動作領域(SOA)の大きいIGBTの選定とゲートドライバ回路の電気計算から入りました。
ブリッジ回路
卓上サイズのテスラコイルでしたらDRSSTC構成かつAC100V駆動だとしてもピーク 100Aは流れないようなシステムを想定し, 主回路のスイッチング素子は Renesas社の RJH60F6DPK を採用しました。秋月電子で買えるしね。
連続コレクタ電流はダイ温度 25℃で 85A, ピーク電流は 170A なので, テスラでも多少無茶できます。以前からよくお世話になっている素子です。
ゲートドライブ回路
スイッチング素子の選定ができたらゲートドライブ回路の設計です。
今回はキットということもあり, ユーザが使用する環境が不定(接地抵抗, アースを取るか否かetc..) なので, 高圧段と制御段は電気的に絶縁するのが望ましいと考えました
そのため, 今回はGDT (Gate Drive Transformer) といういわばパルストランスを用いたゲート駆動回路を設計しました。
GDTを駆動するためには, 2次コイルの共振周波数で振動するフィードバック信号をインタラプタからの矩形波で変調した波形をゲートドライブが可能な電力まで増幅してやる必要があります。
(塗りつぶされてる部分は数百kHzの共振周波数で振動をしています)
高周波では, MOS-FET, IGBTのような容量性ゲートでもかなり電流が流れます。
ゲート容量とGDTのインピーダンス計算をすればおおよそのRMS電流がわかりますが今回IGBTでは300kHzで2Aくらいでしょうか。
今回は簡単にエミッタ接地増幅回路と終段BJTプッシュプル増幅回路によりGDTにパルスを入力します。
インタラプト入力
コネクティビティも自由度を持たせたかったため, インタラプタ入力はBNCとS/PDIF端子(光ファイバ)の両入力を受け付ける設計にしました。インタラプタ信号はBNCで流す派の人が圧倒的に多いイメージですが, 私は光ファイバ派に転身したので^^;
パワー整流回路
基板を設計する上で悩んだのが, 整流回路を載せるかどうかです。
テスラコイラーからすれば, バス電圧は0V~600Vとかを可変できるように基板はバス電圧DC入力とする設計が一般的ですが, コレはキットなのでそのままACプラグでコンセント or ボルトスライダーに接続できたほうが好都合な気もします。
というわけで, 簡単なラインフィルタと整流回路は基板上に持ってくることにしました。コンデンサインプット型なので高調波が心配ですが, テスラコイルなので気にしても仕方ないということで妥協。PFCのせると回路規模も100*100では収まらなくなってしまうので…。
うーん, 基板CADの回路図そのまま張ると分かりにくいですね^^;
フィードバック回路
テスラコイルの放電長にも大きく影響するのが, フィードバック回路です。
他励動作なら2次回路の共振周波数にあわせるように外部オシレータを調整すれば済む話ですが, 自励動作の場合はフィードバック回路の質が共振周波数とコイルのマッチングの度合いに大きく影響します。つまりは放電の長さにも直結する要因だということです。
今回の設計では, ターミナルブロックを使用し, ユーザが2次コイル電流フィーバックかアンテナ電圧フィードバックかを選択できるようにしています。
各フィードバックはツェナーダイオードとクリップ回路, 結合コンデンサを用いたものでフィードバック位相ができる限りずれないよう設計しています。
設計した基板を発注
今回は基板製造はPCBgogoさんにお任せし, 基板は5日ほどで到着しました。
いいかんじ!
部品はほとんどが秋月電子で手に入るもので構成しています。
GDTに関しては巻き数比も特殊ですしどうしても自前で巻く必要が出てきてしまいましたが, 20サイズのトランスを想定していますので市販されているコアが使用できます。トロイダルコアでも実装可能です。
いやー, 100*100におさめるとなるとぎちぎちになりますね。実際に実装してみると。ヒートシンクはとりあえず適当なものを。
要求スペックあたりにしては小さくまとめられたので成功かな、と思います。
一応, 倍電圧整流モジュールなりPFC+昇圧モジュールなりを別に開発して, 電源電圧を上げられるオプションみたいなのも考えています。設計仕様上は400Vくらいまでは入れられます。電源回路の制約でデフォではAC100Vが最大ですが, やっぱり放電長伸ばしたいユーザもおられるでしょう。
試験用コイルを作成し, テストして量産かな。その前に, 有識者の意見を求めたいけど, 叶うかどうか…。
販売に関して
このキットはいずれ販売する予定です。
基板のみの販売と実装済み品の販売です。
コイルは自分で巻かせるスタイルで^^;
マニュアルを書かなきゃなぁ…
テスラコイルを動かす環境について
とりあえず上げたテスラの動画(メモ用)
今回はテスラコイルを動かす環境について軽くつぶやきを…
いやぁ、私は部屋がかなり狭い環境でテスラコイルを作っているので、なかなか大きいテスラコイルは作りづらいものです…。
VU200のテスラコイルなんて、作っても置くスペースがありません。
現状実家暮らしでいろいろ工作しているので仕方ない部分はありますが、そのうちガレージ付きのおうちで一人暮らしとかしてみたいものす。
海外勢のテスラコイルの動画を見ると、結構広い部屋で動かしていますね。
最低でも放電が壁に当たらないくらいの広さは欲しいところです(笑)
そもそも日本ではテスラコイルを動かすのにはかなりハードルが高い部分があります。
・電源電圧が100V。200Vの国にはパワーで勝てません。
・住居密集地が多い。都会で動かすのは騒音的にキツい。
・土地が高い。テスラコイルの音を楽しむには、それなりにエコーがかかる広い空間が必要です。
私はマンション住みですし、隣への防音も強くはない建物ですからテスラコイルを動かすときにはかなり神経を使います。
海外…いいなぁなんてよく思ったりします。
まぁ、文句を垂れていても何も変わらないので半ば諦め気味ですが…
では、逆の視点で海外だったら何が楽かを考えてみましょう。
まずコンセントからくる電圧が220Vとかなので日本勢の感覚からすれば倍電圧整流回路などが不要になります。
自宅で動力契約をして3相200Vを引いている家庭なんて、店舗でも持っていない限り無いでしょう。
PFCなど乗っけて昇圧するにしても、低い昇圧比、つまりより低いキャリア周波数と小さいインダクタでことが足ります。
目標のバス電圧を到達するのに必要な労力が少ないのです。
さらに、広い庭があると良質なアースがとりやすいのは言うまでもありません。
地面にアース棒を打ち込んだり、銅板を埋設すればマンションとは比較にならないほど低いインピーダンスのアースが作れます。
(これは日本でも広い敷地があれば可能ですが…)
なにより家が大きいというのがハンデでしょう。
私は海外に住んだことが無いので詳しくはわかりませんが、どこのおうちもかなり大きいイメージです。
向こうだと6畳ワンルームのアパート暮らしとかの方が珍しいのではないでしょうか??
…
まぁ、こうゆうこともあるので日本勢は海外勢にテスラコイルの放電長などで負けても悔やむことは無いと思います。
ハンデがありすぎますから^^;
というわけでいろいろグチってみましたが、テスラコイルを動かす環境として最適なのは、
・広い。これに限る
・アースがとれる。できれば大地アース。
・閉空間がある。ちょっとしたエコーがかかる。
・近所迷惑にならない程度に近所との物理的距離がある。
って感じですね。
さてさて、
どうしたことやら^^;
秋月のS/PDIFレシーバ (光ファイバー) をテスラコイルに使おう!
どうも, 最近なんだか工作する意欲がなくなりつつあるHkat (カモメ)です。先の記事に書いたとおり, 僕のテスラコイルではMIDIインタラプタ -> テスラ制御回路 の通信に光を用いています。どうやらコレと同じことをしようとして躓いてる方がいるようなので, とりあえず秋月のS/PDIFレシーバについて分かった事とテスラコイルのような本来の使い方と違う場面での使い方を紹介します。
秋月のS/PDIFレシーバとは
そもそもS/PDIFって何だって所からなんですが, 簡単に言うと音声向けの光デジタル通信の事です。光ファイバーケーブルを使って機器間の音声データを伝達します。このSP/DIFには, 光を発射するデータ送信側のコネクタ (トランスミッタ) と, 光を受信するデータ受信側のコネクタ (レシーバ)が必要なわけですが, 秋月で売られているSPDIFレシーバはなんだかノイズにめちゃくちゃ弱いみたいで, 初めテスラに使ったとき「なんじゃこりゃ!?」って思いました…。
しかし, ケーブルも安くPCとテスラコイルのGNDを簡単に分離できる光ケーブルはやはりテスラコイルに積極的に用いたいところです。従来の同軸ケーブルを使った方法だと部屋の形状, 鉄骨の構造にもよりますがテスラコイルとPCを十分に離したつもりでもPCやMIDIインタラプタがノイズにやられて動作を停止したり, 最悪故障することもありました。光だとその心配は無い (ノイズの影響量はコイルと制御機器の距離にのみ依存する) のでとても便利です。今のところ光ファイバを使ったテスラコイルがPCをバグらせたことは無いので個人的にはとてもオススメしています。
実はSPDIFの送信&受信コネクタは秋月電子で販売されており, Digikeyなどに頼らずに入手できます。
しかし, 秋月のSPDIFコネクタは先に述べたとおりノイズにむちゃくちゃ弱い物でした…まぁ, 本来強電界にさらされて使う物じゃないですしね^^; いろいろ試行錯誤するうちにまともに使えるようになったのでその方法を書いておきます。
秋月のS/PDIFレシーバはどんな感じ?
テスラコイルの主回路に電源を入れていない状態 (2次コイルに高電圧が生じていない状態) では問題なく通信できます。0.1 Hz から 20 kHzまで問題なし。出力波形もきれいな方形波です。しかし, 主回路に電源を入れたとたん様子がおかしくなってしまいます。というのも, 出力波形が暴れだして通信どころじゃなくなってしまいます^^; 確認できた症状は以下の通り。
・出力信号が数MHzの発振を起こす
・数秒間出力信号が無反応になる
コレを知らずに初めテスラコイルを動かしたら, 当然バグッて常ON状態, コイルからは「ボシュー」という放電が^^; どうやら一度暴走すると数秒持続するらしく, 焦りましたよ…。
初めは2次コイルからの電磁ノイズがレシーバを直撃して暴走の原因になってるのだと思い, 静電遮蔽をしてみたりしたのですが効果なし。ためしにレシーバをコイルから離してみてもダメでした。そう, ノイズの原因は回路からのものだったのです!
解決策は?
レシーバのデータシートどおりにフィルタを組んでも効果はありませんでした。そこで, 共振中に電気的にどんな感じになっているのかをオシロで見たところ,
VCCにひどいノイズが乗っていました!!このノイズはコイルと制御回路の距離や, 2次コイルのアースの取り方, ブリッジの配線の位置によっても変化する事がわかりました。後に実験を行った結果, 秋月のSPDIFレシーバはVCCラインの電圧変動にとても弱い事がわかりました。一瞬VCCを下げてみたりするとテスラコイルに乗っけた時と同様に出力信号が暴走します。そこで, 以下のように解決。
S/PDIFコネクタのVCC-GNDに 0.1uF の電界コンを, 信号出力ピン-GND間に0.1uFのフィルムコンデンサを直付けするだけ! とりあえず出力信号のケーブルも最低限の長さにしてアンテナになりにくいようにしました。
私の場合, コレだけの処置でS/PDIFレシーバは放電中でも正常に動作するようになりましたが, 回路の作りが違うとまた話が変わってくるかもしれませんので参考までに。
40V入れたらコイル長超えた^^ pic.twitter.com/ozEt143Bfo
— Hkat (@igbtbreaker) February 12, 2019
S/PDIFレシーバは順調です!
まとめ
秋月のS/PDIFレシーバはやたら電源電圧変動に弱い。コンデンサでゴリ押せ!!
いじょう。