~適当な工作情報を投げるブログ

ゲーム、音楽なども作ってるよ~



テスラコイルキットの開発

 お久しぶりです, Hkatです。

ブログを5ヶ月くらい放置してしまっていて, まずいなとおもっていたのですが学校の卒業研究の方に追われていまして…。終るきがしねぇ

これといって趣味の工作ができず, ネタも無い状況でしたが, 何もやっていないわけではなかったのでここらで少しまとめておきたいと思います。

 

テスラコイルキットの開発に着手

 単純に言ってしまえばお小遣い稼ぎのつもりでキットを開発することになりましたので, 初めはみんな大好きテスラコイルのキットから。

といいましても, あまり大きなテスラコイルキットはニーズが微妙という事を日本, 海外の界隈から情報を得まして, 小型のテスラコイルキットを作ることにしました。

 

 今回のキットのコンセプトは, 「とにかく単純に・壊れないこと・小型に収める事」です。

小型というのは, 手乗りサイズのSlayer Exciterみたいなスケールのものではなく, 卓上テスラといえる位のサイズで, 基板サイズは100*100mm以内を目指しました。

こだわりでIGBTフルブリッジ, かつ自励&他励の選択可能にしたかったので, それなりに安全動作領域(SOA)の大きいIGBTの選定とゲートドライバ回路の電気計算から入りました。

 

ブリッジ回路

 卓上サイズのテスラコイルでしたらDRSSTC構成かつAC100V駆動だとしてもピーク 100Aは流れないようなシステムを想定し, 主回路のスイッチング素子は Renesas社の RJH60F6DPK を採用しました。秋月電子で買えるしね。

 

akizukidenshi.com

 

連続コレクタ電流はダイ温度 25℃で 85A, ピーク電流は 170A なので, テスラでも多少無茶できます。以前からよくお世話になっている素子です。

 

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ブリッジ回路 (+GDT)

 

ゲートドライブ回路

 スイッチング素子の選定ができたらゲートドライブ回路の設計です。

今回はキットということもあり, ユーザが使用する環境が不定(接地抵抗, アースを取るか否かetc..) なので, 高圧段と制御段は電気的に絶縁するのが望ましいと考えました

そのため, 今回はGDT (Gate Drive Transformer) といういわばパルストランスを用いたゲート駆動回路を設計しました。

GDTを駆動するためには, 2次コイルの共振周波数で振動するフィードバック信号をインタラプタからの矩形波で変調した波形をゲートドライブが可能な電力まで増幅してやる必要があります。

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GDTに入力する波形

(塗りつぶされてる部分は数百kHzの共振周波数で振動をしています)

 

 高周波では, MOS-FET, IGBTのような容量性ゲートでもかなり電流が流れます。

ゲート容量とGDTのインピーダンス計算をすればおおよそのRMS電流がわかりますが今回IGBTでは300kHzで2Aくらいでしょうか。

今回は簡単にエミッタ接地増幅回路と終段BJTプッシュプル増幅回路によりGDTにパルスを入力します。

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GDTドライバ

 

インタラプト入力

 コネクティビティも自由度を持たせたかったため, インタラプタ入力はBNCとS/PDIF端子(光ファイバ)の両入力を受け付ける設計にしました。インタラプタ信号はBNCで流す派の人が圧倒的に多いイメージですが, 私は光ファイバ派に転身したので^^;

 

パワー整流回路

 基板を設計する上で悩んだのが, 整流回路を載せるかどうかです。

テスラコイラーからすれば, バス電圧は0V~600Vとかを可変できるように基板はバス電圧DC入力とする設計が一般的ですが, コレはキットなのでそのままACプラグでコンセント or ボルトスライダーに接続できたほうが好都合な気もします。

 というわけで, 簡単なラインフィルタと整流回路は基板上に持ってくることにしました。コンデンサインプット型なので高調波が心配ですが, テスラコイルなので気にしても仕方ないということで妥協。PFCのせると回路規模も100*100では収まらなくなってしまうので…。

 

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コンデンサインプット型 整流回路

 うーん, 基板CADの回路図そのまま張ると分かりにくいですね^^;

 

フィードバック回路

 テスラコイルの放電長にも大きく影響するのが, フィードバック回路です。

他励動作なら2次回路の共振周波数にあわせるように外部オシレータを調整すれば済む話ですが, 自励動作の場合はフィードバック回路の質が共振周波数とコイルのマッチングの度合いに大きく影響します。つまりは放電の長さにも直結する要因だということです。

今回の設計では, ターミナルブロックを使用し, ユーザが2次コイル電流フィーバックかアンテナ電圧フィードバックかを選択できるようにしています。

各フィードバックはツェナーダイオードとクリップ回路, 結合コンデンサを用いたものでフィードバック位相ができる限りずれないよう設計しています。

 

設計した基板を発注

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PCBgogoから届いた基板

 今回は基板製造はPCBgogoさんにお任せし, 基板は5日ほどで到着しました。

いいかんじ!

 

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裏面

 

 部品はほとんどが秋月電子で手に入るもので構成しています。

GDTに関しては巻き数比も特殊ですしどうしても自前で巻く必要が出てきてしまいましたが, 20サイズのトランスを想定していますので市販されているコアが使用できます。トロイダルコアでも実装可能です。

 

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部品実装したテスラコイルキット

 いやー, 100*100におさめるとなるとぎちぎちになりますね。実際に実装してみると。ヒートシンクはとりあえず適当なものを。

要求スペックあたりにしては小さくまとめられたので成功かな、と思います。

一応, 倍電圧整流モジュールなりPFC+昇圧モジュールなりを別に開発して, 電源電圧を上げられるオプションみたいなのも考えています。設計仕様上は400Vくらいまでは入れられます。電源回路の制約でデフォではAC100Vが最大ですが, やっぱり放電長伸ばしたいユーザもおられるでしょう。

 

 試験用コイルを作成し, テストして量産かな。その前に, 有識者の意見を求めたいけど, 叶うかどうか…。

 

販売に関して

 このキットはいずれ販売する予定です。

基板のみの販売と実装済み品の販売です。

コイルは自分で巻かせるスタイルで^^;

マニュアルを書かなきゃなぁ…

 

(ECサイトは立てたんだけど, 決済サービスにPaypalなど対応させるか検討中。。)