MOTU 828mk3 Hybrid 修理
こんにちは。最近寒くなってきました。朝起きるのが余計につらいです…。
今回は米のAV機器メーカ MOTU のオーディオインタフェース 「828mk3 Hybrid」 の修理をしたので乗っけておきます。
私は仕事上レコーディングやPAをする機会があるのでこの機種をいくつか所有しているのですが、中古だと1台で5万円とかします。(すでにEnd of lifeですが新品では10万以上…ウヘェ)
MOTU 828の第三世代製品、828mk3にUSBインタフェースを追加したものです。
Hybrid以外の製品にはFireWire(IEEE 1394)しかついていません。(まぁ、FireWireインタフェースカードをPCに増設するとか、USB変換を使えばHybridである必要も無いのですが…)
この機種は従来機の「828」や「828mk2」、USB無しFireWireのみの無印「828mk3」とともにヤフオクなどで故障品が安く出回っています。
チョット電子工作デキル人ならこれを1万とちょいくらいで落としてチョチョイと直せれば儲けもんです。
特に、ここらのファミリーは壊れる場所がほぼ決まっているのでTipsにでもなればと思い残しておきます。
とりあえず外見を確認
明らかに外傷のあるものはいくら安くても落とさない方が無難でしょう。外傷がひどいとラックケースに入らなかったり萎えたりしますから、私は避けます。
届いたものはこんな感じになっていました。
これは修理後の画像なので内部LEDが光っているのが見えますが、裏面パネルになにやら濡れたような跡があります。これは内部の電解コンデンサの電解液が蒸発しここに付着したものです。
これをそのままにしておくと各パーツが腐食する原因になるので、基板をすべて取り外し拭っておくのが良いでしょう。
この製品は電源基板の設計に難があり、電源が入らないもののほぼ100%は電解コンデンサの故障が原因だといって良いと思います。
電源基板は±12Vと+5Vを出力するものですが、特にFPGAとかプリアンプとかは電流を食いますから基板上のスイッチング電源2次側の整流ダイオードがかなり発熱します。
その爆熱ダイオードのすぐ隣に電解コンデンサが密集しているのだから、すぐに寿命がくるのはあたりまえです。
御開帳
いちおう超高級オーディオ機器なので開けるのは毎度緊張しますが、金属筐体なのとネジもタッピングではないので分解の際に壊す心配はほとんどないと思います。
強いて言えば、ラックマウントアダプター(耳)を固定している6角ネジがインチ規格で、JIS, ISO 3mmレンチでも4mmレンチでも開かないことです。3mmだと小さくて4mmだと大きすぎます。9/64サイズのレンチを用意する必要があります。(インチゆるさん)
TIの大きなDSPとXilinxのFPGAが見えます。そのほかはメモリ類とアンプ類です。
最近工場の大規模火災で話題になったAKMのアンプICも見えます^^;
(世界中のオーディオインタフェースが枯渇するとまで危惧されていますが果たしてどうなることやら…)
今回電源が入らないとのことで、とりあえず注目するは手前の電源基板。
ここの電解コンデンサは、不動828の場合はほぼ確実に壊れていますから、全とっかえです。今回は大丈夫でしたが、スイッチング電源の1次側バスコンデンサ(画像手前の大きめの電解コン)が壊れている場合も多いので念のため交換。
黄色いコンデンサは交換後のものです。
もともとついていた壊れコンデンサの容量を計測してみましたが、元2200uFのところ1個は2.4uFに、もう一個は60pFに落ちていました。落ちすぎ。
電解コンデンサはその構造上、電解液が飛んでしまうとこのように急激に容量が抜けてしまいます。これをふせぐには、電解コンデンサの耐圧を余裕あるものにするとか、熱源から離すとかするのですがこの製品のはどっちも守れてませーん。
とりあえず通電
電解コンデンサを交換したらメイン基板に接続せずに通電してみます。オシロスコープで波形を観測し、適切に発振すれば成功です。
コンデンサの容量が抜けた状態だと、スイッチング電源ICのスタートアップ時に2次電流が流れずフィードバックが不全になり、始動しないのです。
とりあえず電源基板は正常に動作するようになったのですが、今度は液晶が映りません。うっすら文字が見える状態。
バックライト切れもこのファミリーではよくある故障です。
これは黄色いグルーで固定されたLEDを交換するだけなのでそんなに難しい作業ではありません。
ガラスに貼られている白いテープをちょっと剥がしてやり、そこにLEDの光を入れてやれば問題なく映ります。
ここでLEDの色を変えればバックライトの色をアレンジできるのですが、ここにお遊びはいらないかなぁということで無難にデフォルトと同じ緑色のLEDをチョイス。
本当は角型LEDのほうがおさまりがよいのですが、残念ながら手元に3mmのLEDすらなかったので仕方なく5mmの砲弾型LEDで…。 ケースとの距離が結構ギリギリです。
修理完了
電源基板、LCDバックライトともに修理していい感じです。
実は、下の画像のようにレベルメータの「IN」「OUT」表示は緑に光らないのですが、バックライトLEDの光をいい感じに漏らすとこんな感じになります。
ここ光ってくれた方が手元が暗いライブ会場でかっこいいので今までの2台はこうしています(笑)
MOTUの828、896ファミリーは今回修理した、電源基板とバックライトの故障が多いですね…。
高級オーディオを名乗るなら高速かつ順方向電圧が低いショットキーバリアダイオードを使うとか、熱設計をちゃんとするとかしてほしいものですが…。
まぁ、スイッチング電源の故障でメインボード側がやられる可能性はかなり低いでしょう。
特に出力コンデンサの容量抜けでは自励発振が止まるくらいで変な電圧が出力に出ることは滅多にありません。
トランスのレイヤーショートで1次-2次間が導通したりしない限りは…ですが^^;
ま、MOTUは製品としては非常に有能なのでどうしても使いたくなるのものです(笑)
付属の専用ソフト CueMIX を使うと細かいDSP EQやDSP エフェクトの設定もできますし、828mk3 Hybrid にはオーディオルーティング機能がついているのでこれ一台でオーディオインタフェース+マルチエフェクタ+ミキサーといったことができます。
複数台もっていればADATで同期してブルジョア・オーディオが楽しめたりしますw
では。